彩鳳舞丹霄☆前川 多仁の鬼魔愚零録☆

染織工芸を出自とした美術家、前川多仁の公式Blogです。

僕がお茶道具をつくるわけ☆ファーストコンタクト編☆

 

僕は帛紗や古帛紗、数寄屋袋、菓子切り入れ、、、などなどお茶道具と言われるプロダクトもつくりますっ。。。

 

そもそも、僕は茶の湯というものには、実はまったく興味も持っていなかったし、まさか僕がそんな世界に触れる事も考えもしなかったのですが。。。

 

いちお、今は亡き、中川幸夫さんに電撃的な衝撃を受けて、生け花(いわゆる一般のお教室でしたが。。。)は習ってましたが、、、

 

 

っで、そんな僕が、、なんでお茶道具をつくり始めたのかと。。。

 

きっかけは、案外、単純な出来事で、、、

 

講談社週刊モーニングという漫画雑誌に『へうげもの 』という茶の湯の世界の変な人(なんて言うたら怒られるか…)、古田織部を主人公にした漫画が連載してました。

 

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写真提供:講談社  なぜかの、、、台湾版チョイス『へうげもの』(もちろん公式です)



 

僕は週間モーニングは長いこと読んでなくて、恥ずかしながら『へうげもの 』っていう漫画や、そもそも茶の湯にまったく興味をもってなかった僕は、古田織部すら知らなかったのです。。。

 

そして、もう10年以上前になるのかな???

 

当時、漫画『へうげもの 』のスピンオフ企画で、現代のへうげもの(変テコなものみたいな意味かな?すんません、、、専門家の方、、、うまく訳せません。。。)を集結させた、「へうげ十作」という変テコ陶芸家集団がモーニングの編集部のこれまた変テコな担当者さん(まじ怒られるな…)によって集結されてました。。。もちろんのこと、僕は当時、まったく知らず…。。。

 

そんで、どういう訳か、とある僕の展覧会でのトークイベントの後、その編集者の方がわざわざ来られていて、僕に「陶芸だけじゃなくて、もっと広く茶の湯の面白さを伝えたい」ってのと、「自分たちがやりたいのは、当時の染織の再現や伝統的な染織のリメイクとかじゃなくて、そういうのは、まったく自分たちの求める〈へうげもの 〉なんかじゃないんですっ。もっと今を感じる〈へうげもの〉な染織を求めてるんですっ」って。。。

 

妙に冷静ながらも、目の奥ではメラメラとした、なんか時代をひっくり返したろうやないかっ!!!みたいな熱さみたいのを感じて、この変な編集者のおっさん(いや、いよいよホンマ怒られるわ。。。)ちょっと信用してみようかなって。。。そう思ったんです。。。

 

とはいえ、、、心の中で〈へうげもの〉って何???、わけ分からへんねんけど、、、って思いながら聞いてました、、、スミマセン。。。ごめんなさい。。。編集部、Fさん、、、。

 

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週間モーニングより(講談社)。DJの小林径さん「へうげもの」のCD「数寄國」の発売時の号!!!  なんと、たまたま、僕の妻が数年来の小林径さんの大ファンのだったという。。。そしてこのトビラをみて日本で「前川君の奥さん」って誰???って思った人がどれだけいるだろうか(wwww)!!! おもしろすぎる!!! やるな、編集部のFさん。。。



 

僕自身も、染織工芸を出自としながら、僕はたまたま使う技術や素材のせいだろうか、、、染織工芸⇔現代美術のあいだをニュートラルに動きなら(とくに自分では意識しては無かったのだけれど。。。)作品発表を続けていました。。。

(究極的には、僕の考えは工芸と美術/現代美術の区別はないという立場をとっていますが、もっとその手前の所の話で…)

 

そして、しばらくこの変な編集者の方と話してて、工芸⇔美術という理論武装が今の時代、もうナンセンスだと思っている(ただし、出自や文脈として知っておくことは大前提)僕にとって、この編集者の人、僕の作品を全く既存の工芸論の枠組みで捉えないなぁ〜、珍しいへんな人やなぁ〜って、何となく面白そうやし、このへんな人とちょっと付き合ってみようかって思ったんです。。。

 

 兎にも角にも、それが僕の茶の湯とのファーストコンタクトだったんです。。。

 

今ではとてもありがたい事に、僕のこうした染織工芸の考え方を理解して、観てもらえる方々はとても、とっても多く、嬉しい限りですが…☆

 

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日本橋三越本店で開催された展覧会の時、地下鉄の三越側に告知された広告。こうして東京の地下鉄の駅に自分の名前が大きく載る機会って少ないから、なんか嬉しいね。しかも漫画がらみってのが尚更うれしい気がするの。。。ちょっと写真がピント合ってなくて失礼。。。自分の名前がどこか分からん。。。

 

 

 なので、僕の茶の湯の知識は漫画の『へうげもの』から知った事がほとんど…いいのか、悪いのか…。。。

 

そこから茶人のM先生を紹介いただき、まったく素人の僕にお道具について教えていただいたり。。。

 

その後も、多くの茶人の先生方とお会いする機会をいただき、ご教授いただいたり、、、僕なりに茶道具をつくっていくようになりました。。。

 

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写真提供:ギャラリー白白庵 古帛紗『艶美毒』



 

そして、徐々に茶の湯って言う不思議なトラップみたいなのに、僕はみごとにはめられていく事になるのです…。。。

 

 

ありがたい事に「へうげもの」関係」の展覧会もちゃんと数えてないけど、、、数十件、おっそろしい数の企画もいただいきました。。。

 

ってか、陶芸家さんたちの展覧会ペースについて行くのが必死で、、、この数十件、こなしながら、別の展覧会も余裕でスイスイやり繰りしていく陶芸の人たち目の当たりにして、こいつらヤベぇ〜、タフってか、人間力高すぎ〜ってビビりまくり、、、、今となっては、いろいろ学ばせてもらいました。。。

 

 

しばらくして、僕は茶道具をつくならば、本格的に茶の湯を学ばなければいけないかもっと思い、M先生に相談しました。。。

 

すると、、、意外にも、、、M先生、すっかりお見通し、、、「前川さんはね、、、きっと茶の湯を知らないから、これだけの、すばらしい(ちょっと自分で書くの恥ずかしいけど。。。)作品がつくれるのですよ。。。そして、もうすでに、道具としての基本は理解されてるから、もう十分ですよ。。。知らないほうがいいですよ。。。」

 

って。。。

 

ん、、、すでにもう先を読まれてましたね。。。

 

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写真提供:ギャラリー白白庵 抹茶椀/金理有氏作 帛紗『蛇と蜜』
乙亥会 代表代行 川原宗敦先生のお点前によるお茶



 

茶の湯の世界で求められている「僕」は、「へうげもの」、それも茶の湯の常識(あくまで道具なので、使い勝手や道具としてのルール、布の張り具合、柔らかさ、手触り、そのあたりは、もちろんきちんと考慮しています)をくつがえすものでなければならないんだなあって、、、そのままの僕でよいのだって気づかされました。。。 

 

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作品『魔』・『鬼』と帛紗『日天子』・『艶美薬』・『青い鳥』(左から)



 

伝統柄をやっている方は、それはそれでよい。

 

僕には僕にしかできないお茶道具があるんだなって、、、当然なんだけど、、、言われて改めてハッと思いました。。。

 

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作品『阿弥陀如来』と帛紗『夢幻鳥』・『幽冥界』・『蛇と蜜』(左から)



 

守破離」ってやつ???ですよね。。。先生???

 

ようまだちゃんと意味理解できてるか不安やけど。。。

 

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作品『不動明王』と古帛紗『艶美薬』・『夢幻鳥』・『蛇と蜜』



 

話は少し変わりますが、例の変な編集者さん(ほんまいい加減怒られるな。。。)が「へうげもの」を語る際に、よく「越境」という言葉を使われます。

 

僕のお世話になっているギャラリー白白庵のオーナー石橋氏もよく使われる言葉です。

 

僕はたまたま周りのみなさんのおかげで染織工芸から現代美術、また茶の湯の世界まで、あらゆる分野まで「越境」させてもらえました。。。

 

また、僕自身のあつかう技術や素材も伝統的なものから最新テクノロジーまで、また他分野で活用されていた技術や素材などもとりいれ、ますます「越境」のスピードは加速しています。

 

 

ポストインターネットの時代、またコロナ禍により多く人が生き方やあらゆるものの価値観を見直したと思います。

 

悲しいきっかけではありますが、ネット技術やそれに伴う技術は急速に加速し、生き方の多様性がこれから更に顕著に現れてくると僕は思っています。

 

だからこそ、何か1つの観念に縛られて生きていくのは、非常に困難であり、もったいない時代になるでしょう。

 

自分一人の中でも、今までに無い多様性に満ちた自分という存在ができ、常に変化・更新し続けていくでしょう。。。

 

アイデンティティーの模索や自分探しなんて、もうすでに過去の幻想にすぎません。。。

 

 

これからの時代、この「へうげもの」が教えてくれた「越境」という能力を身につけて、自分に無かったことを認める、理解する、また取り入れる、多様性あふれる可能性に満ちた人々が増えると、これほど素晴らしい未来はないでしょう。。。

 

なんだか、、、タイトルから随分と遠ざかったような終わりで、、、恐縮です。。。

 

 

 

○掲載写真の作品に対するお問い合わせはギャラリー白白庵まで。

白白庵 PAKUPAKUAN | Art Crafts JAPANESE HYBRID ART

 

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※帛紗・古帛紗、菓子切り入れなどに関しては、現時点でECサイトにて販売しておりませんので、お手間をおかけしますが、直接、ギャラリー白白庵までお問い合わせください。

【ギャラリー白白庵ECサイト

染織作家・前川多仁「Shangri-la」 – 白白庵 PAKUPAKUAN